翼を失くした鳥は,ただ静かに,眠りに就くだけだ。もう,空は,ない。
リアルネットワークス社と大手レコード会社3社で設立したミュージックネットが,ナップスター社と提携,ナップスターが3社の楽曲のライセンスを提供することになった。残るレコード会社のユニバーサルとソニーによるデュエットとの対立姿勢が濃くなっている。ユーザーは,アーティストが所属しているレコード会社を確認してから,どちらかのサービスを利用することになる。
では,ミュージックネットとデュエットが一緒になれば便利ぢゃないかと思うかもしれないが,そんなことができればそもそも2つにわかれているような状況は生まれていない。当分はこのような体制が続くだろう。どんな問題が起こるかわからない音楽配信など,ナップスターが死んだ今となっては,別に急いでやる必要がなくなったレコード業界なので,今はいかに自分の利益を確保できるかという一点だけでの行動となっている。
結局,ナップスターは,なにも変えられなかった。旧態依然としたシステムに,飲み込まれた。翼をもがれ,羽根をむしばまれ,飛び立つことができない身になってしまった。残念ながら。ミュージックネットとの提携は,ナップスターの墓標となる。だが,この墓標は終わりではない,著しく偏執的な権利主義に硬直している音楽は,いつかその拘束具を自ら外すこととなる。その起爆剤となるものがなんであるかはまだわからないが,ナップスターが作れなかった歴史を作るものとなる。今はただ,翼をもがれた鳥の,安らかな眠りを見守るだけだ。
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